第四章:新たなる謎?

 

 ところで、スロットマシンが現代の形に至るまでには、いくつかのエポックメイキングな改革がありました。

 

・3リール

 その最初で最も基本的な改革は、米国のチャールズ・フェイが1899年に製造した「リバティ・ベル」で行われました。初めて3つのリールを備えたそのスタイルは、スロットマシンの基本要件として、現代に受け継がれています。また、余談ではありますが、この機械に使用された「ベル」の名は、その後1960年台半ば頃まで、実に半世紀以上にわたってスロットマシンの代名詞となっていました。

 

・フルーツシンボル

 次のエポックは、スロットマシンのフルーツシンボルです。これは、1910年に、ミルズ社がスロットマシンにガムの自販機を取り付けることでギャンブル機ではなくガムの自販機だと主張するにあたり、リールのシンボルもガムのフレーバーを象徴するフルーツとしたものですが、これがスロットマシンをよりポピュラライズする事に貢献しました。

 現代米国のスロットマシンは、絵柄が一つおきに配置されるゴーストタイプが主流となったため、使用されるシンボルの種類が減り、フルーツシンボルは僅かにチェリーとバー(バーシンボルの本来は、そのマシンが売るガムのブランドマークだった)にその名残を残すのみと言っても過言ではない状態なっていますが、欧州では今でも健在で、「フルーツマシン」という言葉がスロットマシンを意味するようになっています。

 

・ホッパー&筐体デザイン

 三番目のエポックは、1964年の「マネー・ハニー」から始まる、バ−リー社の一連のスロットマシンです。これには二つの新機軸が含まれておりました。ひとつは、ホッパーと言う払い出し機構で、現代ではコインの払い出し機能を持つギャンブル機で ホッパーを搭載していない機械は想像できないほどです。ただ、ラスベガスでは、数年前より払い出しをプリントアウトで行う機械が急激に普及してきており、これがホッパーに取って代わる新たな改革と言われる日も遠くないかもしれません。いや、既にそうなっているかもしれません。

 もう一つの新機軸は、その筐体デザインです。これについては、前章で言及しておりますので詳しくは述べません。ただ、フロントドアを全面的に開くようにしたり、筐体前面の広い範囲を光らせたりしたのは、実はバーリーが初めてではありませんでした。しかし、そのデザインが残らなかったのには、きっと何か足りなかったものがあるのでしょう。実際のところ、バーリーのデザインは、従来の他のどの筐体よりも明らかに現代的で洗練されているように感じます。

 

・ステッピングモーター

 さて、その次に起きたエポックと言える改革は、リールの駆動/停止のシステムです。今、世界中のカジノで稼動しているリールを備えたスロットマシンの殆ど全ては、ステッピングモーターによってリールを回転及び停止させています。これは、ホッパーに匹敵するどころか、それ以上の、スロットマシンの歴史上に特筆すべき大改革です。

 

 ところで、今回、ジェミニの歴史を調べていたら、では、初めてリール機構にステッピングモーターを導入したのはどこのなんという機械だったのかという新たなる謎が生じました。

 

 手元の資料(Slot Machines, A Pictorial History of the First 100 Years(third edition))に拠れば、英国ウェールズのJPM社が1982年に「ナッジ・マシン」(停止したリールを、ボタン操作によって上下させるフィーチャーを備えたスロットマシンで、英国ではポピュラー)で使用したのが最初となっています。更に1985年に日本のユニバーサル(現アルゼ)がステッピングモーターを使用した製品を発表して市場を驚かせ、バーリーやIGTもすぐに追随した、とあります。

 

 今回ご紹介申し上げたインタビューの中には、「ジェミニ」にはパルスモーター(=ステッピングモーター)が採用されているとありました。(下線部分については、第三章・「訂正と注釈」を参照の事)。そして、そのジェミニは、JPM社のナッジ・マシンより5年も早い1977年に世に出ています

 

 JPM社は果たしてニッポンのパチスロの存在を全く知らずにステッピングモーターを導入し、ナッジ・マシンを開発したのでしょうか。

 また、それ以上に、ユニバーサル(現アルゼ)は、日本の企業として、ジェミニなど一連のステッピングモーターを使用したパチスロを見ていたのみでなく、同社も同様に開発していたわけですから、その技術がカジノのスロットマシンに転用されたであろう事は想像に難くありません。

 

てことは、現代スロットマシンの重要部分の元祖は、日本のパチスロ??

 

謎探求の旅は、まだもうちょっと続くのかもしれません。

 

 

続・ニッポンのスロットマシン 

 

 

(2006.08.01)

 

  ←第三章に戻る  ↑目次に戻る↑  


 

←ホームページに戻る   ←サイトマップに戻る 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送