第二章:「ジェミニ」筐体の真相

 

 まず最初に、「ジェミニ」とバーリー製品の類似点をおさらいしてみましょう。

 

←左が「ジェミニ」、右はバーリーの「5ラインペイ(1970)」

 

 まず、「ジェミニ」とバーリー製品の類似の秘密について、マックス社で「ジェミニ」を開発をした角野氏に対するインタビュー記事には、このように記述されています。

 

――『ジェミニ』の写真を見るとバリーのスロットマシンにそっくりですが?

角野 もうみんなそうですよ。実は『ジェミニ』はバリーの『マニー・ハニー』をベースにして『クイックドロウ』の部品を使って製造したものなんです」 (原文ママ・引用は以下同様)

 

 なんと、似ているもなにも、「ジェミニ」で使われていた筐体はバーリーの筐体そのものでした。ワタシが、「ニッポンのスロットマシン」で、「中古機を流用しているのでは」と疑ったのも、あながち的外れではなかったのでした。

 

 謎が解けたのは嬉しいのですが、ただ、「マニー・ハニー」を「ジェミニ」のベースとして名指しするのは適切では無いと考えます。なぜならば、「マニー・ハニー」の筐体には、「ジェミニ」に存在するフィーチャーや配当表が描かれた上部キャビネット部分がなく、むしろ、後述する「クイックドロウ」の筐体とほぼ同じ外観をしているからです。バーリーの筐体で、「ジェミニ」に真にそっくりと言える上部キャビネット部分を備える筐体が出現するには、この5年後の1969年に世に出る「コンチネンタル」まで待たなくてはなりません。

 

 「マニー・ハニー」は、1964年、「モデル742A」シリーズとして製造された10機種のうちの第一号です。このシリーズは、確かにその後のスロットマシンの外観デザインのベースとなり、スロットマシンの歴史におけるエポックの一つと認識されています。それほどの筐体であったため、インタビューでバーリー筐体のルーツに話が及び、その際にその第一号機である「マニー・ハニー」の名前が挙がったのを、後に記事として簡潔にまとめようとして、このような表現になったのではないかと思います。

 

 インタビューでは、もう一つ、「クイックドロウ」という機種名も挙げられています。

←クイックドロウのフライヤー

 

 この写真には、前面に4つのボタンが付いているのが見えます。このうち一つは左端に少し離れて付いており、残る三つは、3つのリールのそれぞれに対応するかのように、真下に着いています。

 

 このボタンのうち、左端の一つは「コールアテンダントボタン」と言い、これを押すと係員呼び出しランプが点灯します。

 

 リールの下の3個のボタンは「ホールドボタン」と言い、「ホールド&ドローフィーチャー」で使用します。これは、任意のリールを固定(ホールド)してゲームをする事ができると言うフィーチャーで、普段はあまり意味がありませんが、大当たりの絵柄がどこでも2個出現した時には俄然威力を発揮します。すなわち、その2つのリールをホールドして次のゲームを行えば、後は残る一つのリールに同じ絵柄が出てくれれば大当たりとなるというわけです。

 

 なお、何らかの当りが発生したり、または一度リールをホールドしてゲームを行った場合は、その次のゲームではこのフィーチャーを使う事はできないようになっています。

 

 インタビューでは「『クイックドロウ』の部品を使って」とありますが、「ジェミニ」のストップボタンと「クイックドロウ」のホールドボタンは、形状も原理も全く異なるものなので、この言葉はボタンを指しているものではありません。ワタシは、これは「ホールドボタン用の穴をあけたフロントドア」を指しているものと考えます。ストップボタンの設置を必須とされていたマックス社にとって、そのような部品が存在すると言うことは、まさに渡りに舟だった事でしょう。

 

 ところで、「クイックドロウ」の製造年は1966年で、それから「ジェミニ」開発までの間に、同じフロントドアを使用した別製品が多数製造されていますので、こちらもやはり機種名を限定して「ジェミニ」の素材とするのも、適当ではないと思います。

 

 

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